COLUMN

Deadly Beautiful

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"Deadly Beautiful" Hideo Uchiyama × Akio Ohmori

Permanent Genuine ディレクター/内山英雄。そして彫刻家/大森暁生。
2010年に発表されたこの二人による異色のアーティストセッション"Deadly Beautiful"。

「危険性を含む物の美しさ」を意味するこのテーマ。知る人ぞ知るタトゥーアーティスト兼デザイナーと新進気鋭の現代作家による異色のコラボレーションという、これまでに類を見なかった、斬新なプロジェクトととしてファッション業界のみならず、現代美術の業界内でも話題となりました。

内山氏の頭の中に描かれたイメージを、大森氏の緻密な手作業によりカタチとして具現化され、遂にこの彫刻作品「Walking Cane」「Buckle」が産声をあげました。またこれらは限定数量にて生産され、一部の関係者に向けて販売されました。

今回のコラムでは、こちらのプロジェクトが誕生した経緯。そしてこれらの作品が生み出されるまでの逸話をお二人に伺いたいと思います。

(かねてより親交のあったお二人ですが、どのような経緯からこのプロジェクトを始動させたのでしょうか?)

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U:大森さんの代表的な作品のひとつに木製のステッキがあり、自分もこの作品に魅力を感じていました。ある日、大森さんが自分のアトリエを訪ねてくれた時、たまたま話の流れからこのステッキについての話題になり「一緒に作ったら面白そうですね。」という感じでこのプロジェクトがスタートしました。

O:自分は立体造形の分野で美術作品を作っているのですが、内山さんとこの企画を進めていくにあたり、せっかくやるなら自分の得意な分野で、そして内山さんの頭の中に築かれた【イマジネーション=2D】を、僕の専門分野である【立体造形=3D】で作品を作り上げよう。という気持ちから作業に取り掛かりました。

U:Permanent Genuineのブランドコンセプトである「普遍」「恒久」「飽きのこないモノ」というビジョンをお互い、根底に共有していました。また実際に使用することを想定し、多少手荒く扱っても耐えうる丈夫さを持ち、使い続けていくことでより自分の色に染まり深い愛着が生まれていく。そんな作品を目指しました。

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(まずこちらの「Waking Cane」についてですが、どういった経緯からこのデザインが生まれたのでしょうか?)

U:まず初めに、自分の頭の中に生まれたメインのモチーフが「スカルヘッド」でした。それをステッキヘッド(握り)部分のデザインへと落とし込むことを大森さんに提案したところ、大森さん自身も好みのモチーフでしたので快く受け入れてもらえました。

O:その当時「百合」をモチーフにした作品作りにハマっていまして、このモチーフをどうにか内山さんの思い描くスカルヘッドのデザインと融合出来ないかな?という感じで僕なりにイメージを膨らませていました。その間に内山さんがスカルヘッドのデザインを完成され、それを目にした後、繰り返しラフ画を描いていくことで、この百合に乗ったスカルヘッドのデザインが完成しました。

U:それから話を進めるにあたり、どういった素材を使用するのかを考えていきました。見た目の格好良さはもちろんですが、使いやすく機能美も兼ね備えたデザインという点に重点を置きました。考えを重ねた結果、ステッキヘッドの部分が真鍮、柄に丈夫な木材を使用した異素材のコンビネーションのデザインが閃いてきました。

O:使用する木の種類は、ホワイトアッシュを使用することに決めました。ホワイトアッシュは野球のバットにも使用されている強度のある木です。さらに芯が硬いけれど粘りがある特性のため、ステッキには適している種類と言えます。

U:それからまず最初に、ステッキヘッド部分の形状のデザインから始めました。スカルのリアリティを損なわず高いクオリティを追及することはもちろんなのですが、この部分は実際に使用する際には最も負荷がかかり、機能性を大きく左右する大事な部所です。使いやすさを最大限に引き出すため、何度も何度もドローイングを重ね角度や大きさ、そして全体のバランスを設計していきました。

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O:次に、自分は柄部分の設計に取り掛かりました。この部分にも使用上の強度が求められる為、形状の設計が大変な作業でした。何度か原形を作った結果、上部から下部にかけてテーパードしていく八角形の形状に落ち着きました。ちなみに八角形を立体にする場合、手作業でないと不可能です。そして形が出来上がった後は表面の仕上げへと作業を進めます。僕の作品作りにおいてもたくさんの種類の塗料を用いますが、今回のこちらのプロダクトでは内山さんとお話した結果、天然の漆を使うことに決めました。漆は日本の伝統工芸品において食器や家具などに良く見られる塗料ですが、その強靭さ、そして見た目の美しさから高く評価されています。このCaneでは深みと味を表現するため、良い表情が出るまで何度も何度も色を重ねて仕上げました。今、お客様が所有しているCaneも一点ずつ、これら全ての工程を、僕の手作業によって作り上げています。

U:そしていよいよステッキヘッド部分の原形作りへと工程を進めました。通常、金属の鋳造の場合、粘土や蝋を用いて立体を作るのですが、今回のこのステッキヘッドの繊細さとリアリティを前述の工程で表現することは不可能でした。そこで大森さんの専門分野である木を用いて原形を作り出すことになりました。

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O:そうしてついに、この木型が完成しました。内山さんの頭に描かれていたイメージを繊細にはっきりと立体で表現できたかと思います。そしてその後、真鍮で鋳造されたこのパーツが出来上がり、全てのパーツを組み合わせようやくこのCaneが誕生しました。

U:その後に開かれたエキシビジョンにて、このCaneを展示しましたが、お客様からも非常に高い評価を頂けました。限定本数にて販売もしましたがおかげさまで期間中に全ての売約を頂く形となりました。購入して頂いたお客様が気に入って使っている姿を見かけた時には、とても嬉しい気持ちになります。長い時間をかけて大森さんと一緒に作った甲斐があったなと感じます。

O:そうですね。完成度の高い作品ですので、末永くお使い頂ければ幸いです。

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(初めて展示会でこのCaneを見た時、その独特な存在感と迫力に圧倒されたことを覚えています。改めて今お二人のお話を聞くうちに、さらにこの作品に対する深みが増しました。では続きまして、もう一つの作品"Buckle"についてのお話を伺いたいと思います。その作品はどういった経緯から誕生したのでしょうか?)

O:普段、僕は内山さんが過去にデザインを手がけたバックルを使用しているのですが、今回せっかくこの"Deadly Beautiful"の企画に参加出来る機会を与えてもらえたので、<これからもずっと一緒に過ごせる、本当に気に入ったバックルを一緒に作って頂きたい>と内山さんにお願いしたところ、快く引き受けてくださいました。

U:自分も、大森さんが僕のデザインした商品を気に入って身につけて頂けているのが素直に嬉しかったです。そうして一緒にお話を進めていくうちに、Caneと同じく「スカルヘッド」「百合」をメインモチーフにすることになりました。しばらくしてから全体のイメージが浮かんできて、デザインが完成しました。そしてCaneと同じく、こちらのBuckleでも、素材は真鍮と木を使用したコンビネーションのデザインに決まりました。

O:次に内山さんのデザイン画から、それぞれの素材をどの部分に使用していくかを考えていきました。バックルの細かい構造とサイズの設計を進めていくうちに自然に今の形状に至りました。その際に一番気を遣った部分は、内山さんの描かれた繊細で力強い原画のイメージを崩さず、立体で表現すること。そして日常的に使用する際に求められる強度と使いやすく設計された形状・構造を実現することでした。全体の設計が完成した後にCane同様、木を彫って原形を制作しました。

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O:原形が非常に良く仕上がりましたので、さらに完成時の雰囲気を内山さんにお伝えするため金箔を貼って仕上げました。そして内側に使用する木は黒檀(エボニー)に決まりました。

U:黒檀は弦楽器、家具や仏壇に用いられる銘木です。かのストラディ・バリウス製のバイオリンにもこの木が用いられています。極めて高級感のある素材なのですが、非常に硬く、重い性質を持っており、切削が困難なことでも知られています。

O:その性質ゆえ、実際に立体にする際にも、細かくカーブをつけピッタリの大きさへと削る作業が困難を極めました。。。しかしこの苦労の甲斐もあり、内山さんの頭に思い描かれたビジョンを忠実に立体で表現し、自分の理想とする普遍的な作品へと仕上げることが出来ました。出来上がってからは毎日身につけ、共に時間を過ごしています。

U:自分も出来上がってきた作品を見た時、その高い完成度に驚きました。さすがはその道の専門家である大森さんの作品だな。と思います。

(今日はお二人の貴重なお話を聞かせて頂きありがとうございました。また今後のお二人の新たな企画を楽しみにしています。)

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■大森 暁生 (おおもり あきお)

1971 東京生まれ
1996 愛知県立芸術大学美術学部彫刻専攻卒業。 

国内外のギャラリー、百貨店、アートフェア、美術館等での発表に加え、多くのファッションブランドとのコラボレーションなど幅広く作品を発表。2010年には「RUDE GALLERY BIG⑩」企画にてショップ内で個展を開催。

フォトエッセイ+作品集『PLEASE DO DISTURB』(芸術新聞社) 大森暁生作品集『月痕 ~つきあと~』(マリア書房)を刊行。

AKIO OHMORI WEB SITE http://akioohmori.com/

The Origin Of Permanent Genuine

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ダブルブレストのBiker's Jacket、いわゆる「ライダース・ジャケット」が自分は好きなのですが、

今回はなぜ、このライダース・ジャケットという存在に魅かれたのか。。。

そして自身がディレクションを手がける、この「Perment Genuine」というブランドがどのように

誕生したのか。 その経緯を綴ります。

まずはライダース・ジャケットとの出会い。

きっかけは70年代。当時リバイバルで観た不朽の名作「The Wild One」にて、

主人公をはじめとする、映画の中のリアルなバイカー達が着ていたライダース・ジャケットを目にし

カルチャーショックを受けたことでした。

乗り込まれた汚いバイク。そして着込まれ、彼らの身体の一部と化していたライダース・ジャケット。

映画全体の空気感を含めたその様は、当時の自分の眼にとても新鮮に映りました。

そして、自分でもこんな雰囲気のライダース・ジャケットを着てみたくなり、70年代後半から古着屋を巡り、やっと自分の理想に近いライダース・ジャケットと出会いました。

その後も、興味が尽きることはなく、国内外を問わず様々なメーカー、年代のライダース・ジャケットを入手し、これまでを過ごしてきました。

そしてある時、何気なくそれらのライダース・ジャケットを着て、見て、改めて感じたこと。。。

「アームホールがもう少し狭ければな。。。」

「着丈がもっと長ければな。。。」

「もっと丈夫で、良い雰囲気に経年変化する革だったらな。。。」

今の自分の年齢、そして環境やスタイル。それに対して大好きなライダース・ジャケットのテイストを近づける。

そういった、必然的でとても大事な部分を、何気なく知り合いの洋服ブランドの友人に話したことが

この「Perment Genuine」というブランドが始まるきっかけとなりました。

その後、ファーストサンプル(試作品)の完成までには、度重なる修正と多難の道のりがあるわけですが。。。

出来上がってきたサンプルを見て、実際に着た瞬間。

初めて理想のライダース・ジャケットを手に入れた、あの当時経験した、感動が思い出されました。

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これまで数多くのライダース・ジャケットと接してきて、自分の中に吸収された、それらのデザイン性と機能性。そして価値観。

このブランドのプロダクトには、自分なりの解釈、そして思いを存分に注ぎ込んでいます。

「Relentless Jacket」。着心地も含め、実に気に入っています。

気になる方は是非、一度袖を通してみてください。

現在、Permanet Genuineでは色々とこれからのことを企画しています。

詳細が決まり次第、ご報告いたします。

それではまた次回。

HIDEO UCHIYAMA COLUMN

ディレクター / 内山英雄からのメッセージを発信していきます。

We will keep posting Director Hideo Uchiyama's messages.